Excel VBAを活用した効率的な開発環境構築法:複数現場への展開と仕様変更をスムーズにする仕組み
- yuji fukami
- 1月10日
- 読了時間: 4分
Excel VBAを活用した業務効率化ツールは、現場ごとに最適化しやすい反面、複数現場への展開や仕様変更時に大きな課題が発生することがあります。本記事では、ある大手企業の案件を例に、効率的な開発環境を構築するための手法をご紹介します。特に、「専用共通アドイン」を中心としたアプローチによる開発効率化について詳しく解説します。
案件の背景:複数工場でのマクロ付きブック展開
本案件では、A工場で業務効率化のためにマクロ付きブックを開発し導入しました。このツールはA工場で非常に高い評価を受け、B工場やC工場など他の工場にも展開したいという要望が寄せられました。
図解:開発から展開、そして仕様変更の課題
以下の図は、この案件におけるプロセスと課題を示しています。

1. 最初の開発
最初に、A工場の業務フローに合わせて「開発ブックA.xlsm」を作成しました。この段階では、A工場に特化したツールとして運用されていました。
2. 他工場への展開
A工場での運用実績を基に、他の工場(B工場、C工場)にもツールを展開しました。ただし、それぞれの工場では業務フローや仕様が微妙に異なっているため、各工場ごとにマクロを調整する必要がありました。この横展開のプロセスでは、次のような課題が発生しました:
各工場で異なる仕様への対応に多大な工数が必要。
ツールを管理するコードが複雑化し、保守性が低下。
3. 仕様変更の反映
さらに、A工場でツールに仕様変更が発生した場合、B工場やC工場にもその変更を反映する必要があります。この作業はツールが展開された工場の数が増えるほど手間が膨らみ、運用コストが増加する原因となります。
専用共通アドインを活用した解決策
これらの課題を解決するために導入したのが「専用共通アドイン」を活用した開発環境です。この仕組みにより、仕様変更や横展開の作業を効率化することが可能となります。

1. 開発時の構成
開発時には、専用共通アドイン(専用共通アドイン.xlam)を用います。
各工場の開発ブック(開発ブックA.xlsm、開発ブックB.xlsm、開発ブックC.xlsm)は、専用共通アドインを参照。
マクロの実行ボタンは、共通アドイン内のプロシージャを直接呼び出す形にします。
これにより、共通アドインを修正するだけで、すべての開発ブックに変更が即座に反映されるため、開発効率を大幅に向上できます。
2. 納品時の構成
納品時には、次の手順で作業を進めます:
専用共通アドイン内の標準モジュールを各開発ブックにコピー。
各開発ブックから共通アドインの参照を解除し、独立した形で納品。
これにより、納品後は共通アドインに依存せず、各ブックが独立して動作可能になります。
3. ボタン操作による効率化
さらに、手作業を減らすため、以下のようなボタンを設置しました:
アドイン参照ボタン:開発時に専用共通アドインを参照。
アドイン参照解除ボタン:納品時にアドイン参照を解除。
各モジュールインポートボタン:アドイン内の標準モジュールを各開発ブックにコピー。
各モジュール消去ボタン:既存コードを削除し、新しいコードに置き換える。
これらのボタンを活用することで、開発と納品の手間をさらに削減できます。
専用共通アドインのメリットとデメリット
メリット
仕様変更の効率化:共通アドインを修正するだけで、複数の開発ブックに変更を反映可能。
コードの一元管理:冗長なコードを削減し、メンテナンス性が向上。
横展開が容易:新しい工場や現場にツールを展開する際、既存コードを再利用可能。
デメリット
共通アドイン内のコードは、すべての開発ブックで動作するよう設計する必要があるため、汎用性を考慮した構築が必要。
現場ごとの仕様差異を吸収するための分岐処理が複雑になる可能性。
まとめ:効率化された開発環境で現場の課題を解決
専用共通アドインを活用した開発環境の構築により、複数現場への展開や仕様変更に伴う工数を大幅に削減できました。この方法は、複数の現場で類似の業務フローを扱う企業にとって非常に有効です。
当社では、このような複雑な仕様変更や多拠点展開にも対応可能な技術とノウハウを保有しています。どのような規模や仕様でも柔軟に対応し、効率的なツール開発をサポートいたします。ぜひ、お気軽にお問い合わせください!
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